勝手にコラム


シドニー五輪特集2〜祭典は人種の壁を超えた〜


マニアック度★☆☆☆☆

17日間のシドニー五輪も無事終了した。日本選手のメダルは18個で、女子選手がなんと13個も取っている。大和撫子魂を世界中にアピールしたとも言えるだろう。 かつて体操王国と言われた日本は今回もメダルが獲れなかった。野球もメダルを逃したのは残念であった。そして、いつも浮かび上がってくるドーピング疑惑。今回も何人かの 選手がメダルをはく奪された。日本人選手の中にはそう言った事はなかったものの、爆笑問題の田中が金をはく奪された???
しかし、こんな事をコラムに載せてもしょうがない。今回は人種問題について考えて見た。

ONE KOREA

まず、シドニー五輪の開会式で驚いたのは、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の合同入場行進である。韓国と北朝鮮の選手が、朝鮮半島を描いた統一旗を持って先導する 姿が世界中に映し出された。11万人の観衆とテレビを観ていた何千万人の人々が歴史の証言者となった。公式プログラムでは、北朝鮮が51番目、韓国が97番目にそれぞれ 国旗入りで紹介されていた事が、合同行進が急きょ決まった事を物語っている。しかし、残念なのは今回の合同入場行進は北朝鮮では報道されなかったらしいのだ。興奮に包まれた 韓国の一般住民とは対照的で、北朝鮮の人は歴史的瞬間を目撃する事が出来なかった。そもそも今年、南北の首脳が会談した事が今回の歩みよりにつながったに違いない。 国境を越えたスポーツの祭典は21世紀への新たな弟一歩を踏んだと言えよう。

オーストラリアの星

おそらく今大会で一番スタジアムが歓声に包まれたのは、陸上・女子400m決勝だっただろう。優勝したのはキャシー・フリーマン(オーストラリア)。単に自国の選手だからと言う だけではない。彼女はオーストラリアの先住民族のアボリジニなのである。オーストラリアは1988年に200年祭を迎えた事から、2世紀ほどの歴史しかないと思われがちだが、 先住民族のアボリジニは5〜6万年前からオーストラリア大陸で生活していたそうなのだ。しかし、18世紀に移住してきた白人に迫害を受け、アボリジニが市民権を得たのはつい最近の 1967年である。フリーマンはその6年後の1973年に生まれる。先住民居住区で幼年期を過ごし、いまだ消えない人種差別を目の当たりにしてきたフリーマンが世界の頂点に 立った。アボリジニの旗を振り上げ、観衆の声援に応えるフリーマン。アボリジニの星はスタンドにきらめくフラッシュの中で、オーストラリアの星となった。

100m1分52秒72・・・その名はムサンバニ

泳いでいたというよりも、手をバタバタさせてもがいていた。思わず、「飛べますか?」と声をかけたくなるほどだった。はじめは皆も笑っていたのだが、しまいに歓声に変わった。 水泳・男子100m自由形予選での光景である。この選手は人口44万人の赤道ギニアからやって来たムサンバニ選手、22歳。エントリー3人のうち2人がフライングで失格。人生初の 大舞台は独泳会となってしまった。その為か緊張のあまり前に進まず、激しく手足を動かすばかり。50mのターンをクリアして体力が限界に達し、残り15mでは沈没寸前だった。 それでも「スタンドからの拍手が聞こえてきて勇気が出た」と最後の力を振り絞ってゴールした。タイムは1分52秒72。なんと、200mの世界記録よりも遅いのである。 今年の1月から水泳をはじめたという彼と、国境なき応援がつくり上げたドラマであった。

10年以上もかけて金メダルにこだわったヤワラちゃんから、競技をはじめてから数ヶ月で挑んだムサンバニ選手まで様々ではあったが、それぞれの国の事情で出場出来なかった選手もいたに違いない。 かつて、アパルトヘイト問題で出られなかった南アフリカ共和国。日本もモスクワ大会をボイコットした事もあった。(私はその時「めざせモスクワ」というレコードを買った。)21世紀最初に 行われるアテネ大会では世界中の全ての人にその権利を与えてほしい、と考える今日このごろである。


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