_ 5月2日、11時間にわたる高速道路での移動を終え、尾道のホテルにたどり着いたのが16時15分頃。小高い千光寺山に建つホテルの客室からは、尾道市街と尾道水道、向島等が一望。尾道市街と向島の間の尾道水道はれっきとした「瀬戸内海」だが、幅は300メートル程度で波もなく、まるで川のよう。そこをゆったりと行き交う船がまたいい感じ。
_ とりあえず明るいうちに、尾道を回れるだけ回ることに。ホテルから東に向かい千光寺公園へ。展望台にある食堂で腹ごしらえ。せっかくなので尾道ラーメンを食す。11時間ロクに喰わずにいたので美味い。
_ 展望台から下っていくと、「文学のこみち」と呼ばれる遊歩道があり、道沿いに尾道ゆかりの作家・詩人による作品を刻んだ石碑がいくつも立っていた。「文学のこみち」の先には千光寺があり、お参りをする。
_ 千光寺からさらに下っていくと、細い坂の路地が迷路のように続いていた。そしてその路地を気ままに歩く猫たちがまた堪らない。もっと早く着いて、この猫たちとじゃれ合いたかった…。
_ 大林宣彦監督の映画『時をかける少女』のロケ地となった艮神社でお参りをしてから、尾道駅方面へとターン。また石畳の路地と猫を堪能。時間がすでに18時を回っていて、志賀直哉が『暗夜行路』を書いたという旧居は、残念ながらすでに閉館していた。でも旧居からの見晴らしはとても良さげなのはわかった。
_
それから国道まで降り、駅周辺をぶらついて、もう一食尾道ラーメンを食べてから、坂道を上ってホテルへと戻った。夜景も綺麗だ。で、翌日のサイクリングに備えて早めに就寝。
_ 5月3日朝、尾道のホテルを出発。天候は残念ながら曇り。尾道市役所の有料駐車場に車を止めて、しまなみ海道を渡り今治へと向かうサイクリングを開始。(→本日の走行マップ)
_ まず尾道駅方面へと少し進み、尾道渡船の船乗り場へ。対岸の島・向島へは尾道大橋を渡って行くことも可能だが、この橋は自転車道がないということで、推奨されている船を使って尾道水道を渡ることに。サイクリングで船に乗るというのもなかなかない機会だ。船は300メートル幅の尾道水道の両岸にある船乗り場をピストンする形で運行されていて、しばらく待っていたら対岸から桟橋へとやってきた。自動車が何台か乗れる程度の小さなフェリーで、郵便屋さんのワンボックスカーと、もう一人のサイクリストが自分と一緒に乗船した。船内で乗船賃と自転車持込料110円を払う。
_ 対岸の向島へは3分ほどで着いた。尾道市街側の桟橋は、車が数台待てる程度で他には特に何も無いところだったが、向島側はまるで下町の駅前の雰囲気。
_ 広い桟橋前のスペースの一角には、大林宣彦監督の映画『あした』(新・尾道三部作のうちの1作…未見ですが)の中で呼子丸の連絡船待合所として使われたロケセットをバス待合所として移築再生した建物が建っていたり。
_ 船乗り場から南下し、国道317号に乗って西へまっすぐ、途中から県道377号に変わるが、つきあたったところを南へ。岩子島を右手に見ながら、海岸沿いの道を進んでいく。やはりGW、サイクリストが非常に多い。レンタサイクルとおぼしきママチャリから、マウンテンバイク、クロスバイク、そしてロードバイク。みんなどこまで行く気なのだろう。
_ しばらく進むうちに、因島大橋の姿が見えてきた。最初に渡るしまなみ海道の橋だ。橋下を通過して、老人ホームの裏手から自転車用の有料道路入り口へ。ここから橋までは緩やかな上りになっていて、ロードバイクだと苦になるどころかむしろ楽しく感じるぐらいだった(ママチャリだとしんどそうだったが)。
_ 因島大橋は自動車道の下を走る形になっていた。景色はあんまり楽しめない。この後の橋はどれも車道の横を走る形で、因島大橋だけがこの点他と違っていたのだった。渡りきったところに自転車・原付用の料金所があり、そこに料金分のクーポンを入れて通過。クーポンは前日、尾道駅前港湾駐車場で購入したもので、通常500円(=しまなみ海道の全橋の通行料)1セットとして売られているものが、今年しまなみ海道が10周年ということで、その半額の250円で売られていたものだった。観光等で使えるクーポンも付いていて、いろいろとお得だった。
_ 2つめの島・因島は、途中までは通常のサイクリングコースを進んだが、因島北インター(北)の信号交差点からはそのまままっすぐ進んで、因島水軍城を目指すことに。水軍城への上りはややきついが、距離が短いので登りきれた。因島水軍城は、水軍のふるさと因島にふさわしいものとして歴史家・奈良本辰也氏の意見を参考に1983年にに築城されたものだそうで、全国で唯一の水軍城ということになるらしい。つまり本当の城ではないのだけど、館中には村上水軍ゆかりの武具や甲冑が展示されていて、これはこれで楽しめた。
_ 因島水軍城からは青影隧道を通って元のサイクリングコースへ復帰し、2つめの橋・生口橋へ。
_ 生口橋を渡ると、そこは生口島。サイクリングコースどおり、島の北側を通る。北西部には耕三寺や平山郁夫美術館など観光スポットがあったが、時間の都合でパス。西岸を南下していくと、サンセットビーチの先で瓢箪形の島が見えた。どうやらそれがNHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとなったと言われている瓢箪島らしい。
_ 次は多々羅大橋を通過して、大三島へ。多々羅大橋は全長1480メートルもある斜張橋。途中で「愛媛県」の文字標識が。ここから人生初四国だ。まぁ、本島に上陸しないとあんまり実感はないけど。
_ 大三島はしまなみ海道の中でも一番大きな島で、訪れたいスポットがあるのだけど、この往路では時間の都合で最短コースをとった。伯方島へと渡る大三島橋への上りの途中、鼻栗瀬戸の展望台に立ち寄る。展望台には現皇太子が1981年にここを訪れた際の気持ちを詠んだ歌碑があった。
_ 全長328mのアーチ橋である大三島橋を渡ると、「伯方の塩」で有名な伯方島へ。ここは「伯方の塩ラーメン」で知られる「さんわ」というお店に寄るため、時計回りでほぼ一周するコースをとった。島の東側、木浦地区にあるさんわに着いた時には14時近くだったが、店の前には行列が。待つか諦めるか悩んだが、せっかくなので並ぶことに。30分で入店でき、「伯方の塩ラーメン」と「タコ飯」のセットを注文。塩ラーメン好きの自分も味に満足。
_ 木浦から西に向かい、海岸線沿いの国道317号へ進んでいくと、船折瀬戸と呼ばれる、船も折れるほどの激しい潮流が流れている海の難所が。通りがかったときには西から東に向いて潮が流れている様子がよく見てとれた。そこから少し西に進むと、鶏小島と呼ばれる島が見えた。この島に住むといわれる金鶏の声を正月に聞くと幸せになれるという伝説があるらしい。
_ さらに西に進んで、伯方・大島大橋の下を通過し、自転車道入り口を通りすぎて、道の駅伯方SCパークに立ち寄る。ここには名物・伯方の塩ソフトがあるので、塩分補給も兼ねて食べる。運動中ということも手伝って、なかなかうまい。
_ 伯方島と見近島を結ぶ伯方橋と、見近島と大島を結ぶ大島大橋の連続橋を通過して、いよいよ最後の島・大島へ。
_ 大島のサイクリングロードは途中から島の真ん中を走ることもあり、他の島と違ってアップダウンが一番あった。ここはひたすら淡々と走り、道の駅よしうみいきいき館で小休憩をとって、最後の橋・来島海峡大橋へ。来島海峡大橋は他の橋よりも高さがあり、橋へはループ橋を上っていく。第一〜三ある来島海峡大橋は合わせて約3kmもの長さ。親子連れの自転車など、人出も多かった。ちょっと暴走気味の子供の自転車が危なげ…。
_ 今治側のループを下り、ついに四国本島上陸!自転車道を降りた後は、糸山公園の展望台に上ってみた。時間が17時を超えてしまっていたこともあってか、他に誰も展望台には上がってこなかったが、さっき渡ってきた来島海峡大橋が一望できる好スポットだった。惜しむらくは雲だらけの空…。
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今日の宿は今治市街のため、来島海峡大橋からは10kmほど走った。だんだんと薄暗くなってきた18時にホテル着。自転車をホテルの事務室に預かってもらい、翌日の帰路に備えて早めに就寝。
_ 元職場の人たちと京都競馬場へ。全レース収支マイナスで(3レース当たったけど当たり負けばかり)マイナス23,500円。京都新聞杯で来ないと思ったベストメンバーが来たのがなぁ…。あと、人気薄の和田竜二にやられたり。
_ 第92回にして100周年を迎えたジロ・デ・イタリアが、今日からヴェネツィアでスタート。初日のチームタイムトライアルは、最初に走ったコロンビア・ハイロードが、下馬評で優勝候補だったガーミン・スリップストリームを6秒差で下して優勝。注目のランス・アームストロングがいるアスタナは13秒差の3位と上々のスタート。ランスはゴール前で前を引っ張るなど、怪我の影響は感じさせない走り。
_ それにしても今回のジロ、グランツールで優勝した経験のある選手がぞろぞろいて面白い。ジロで勝ったことのある選手としては、シモーニ、ガルゼッリ、クネゴ、ディルーカ、それにバッソ。ツールで勝ったことのある選手としては、アームストロングとサストレ。ブエルタで勝ったことのある選手としては、メンショフ。
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優勝候補最右翼はバッソだろうけど、山岳が厳しいジロなので、シモーニのようなクライマーにも期待したい。けど長めの個人タイムトライアルがあったりするからなぁ…。怪我で総合優勝は諦めた感のあるランスだけど、この長いタイムトライアルでステージ優勝を狙ってくることは間違いなさそう。楽しみだ。
_ 3日のサイクリングの続き。5月4日、朝目が覚めて外を見ると、路面が濡れているのが分かった。雨か…。雨の準備はしっかりしてきたが、ちょっと憂鬱。雨の降りようによっては途中で船に乗ることも考えた。とりあえず、出発。(→本日の走行マップ)
_ 雨は小降りなので、レインウェアは身につけずに、まずは今治市内小観光。昭和初期の1927年に建築された鉄筋コンクリートの洋館風の建物「今治ラヂウム温泉」→藤堂高虎が築城したそれを1980年に再建したという「今治城」→瀬戸内の重要港湾「今治港」。これだけ見てから糸山へ向かう。
_ 糸山から来島海峡第三大橋を渡った後、料金所手前からエレベーターで自転車ごと馬島へ降りてみた。エレベーターで島に降り立つというのはなかなか不思議であり、新鮮だった。ちなみに自動車では、インターチェンジがあるものの島民専用で、島民以外は島へ降りることはできないらしい。
_ さらに大島を通った後の大島大橋の先に、見近島という無人島へ降りる道があったのでこちらも降りることに。ここにはキャンプ場が存在し、バイクツーリストのテントがいくつか張られていた。
_ 伯方島は行きとは違って西岸沿いを走るショートコース。代わりに次の大三島は多々羅大橋の入り口を通り過ぎ、三村峠を越えて、大山祇神社のある宮浦地区へ。そういえば心配だった天気は、この頃には雲からやや晴れ間が見えるほどに回復していた。
_ ちょうど12時に大山祇神社に到着。神社前のお食事処「大漁」で1時間ほど並び、この店の名物である「海鮮丼」を食す。鯛・サーモン・イカ・イクラ・マグロ・ホタテ・ハマチ…とこれだけの具が入って380円!コストパフォーマンスの高い昼食になった。
_ 食事後は大山祇神社に参拝。境内には鎧、兜、刀剣類が展示されている紫陽殿・国宝館、昭和天皇の研究を展示した海事博物館があり、特に紫陽殿・国宝館には国宝、国の重要文化財がいっぱいあった。源頼朝、源義経、武蔵坊弁慶、護良親王、北条時宗など…の甲冑や刀を目にすることができてよかった。
_ 神社から多々羅大橋まで戻り、橋を渡って生口島へ。雨が酷ければ瀬戸田の船乗り場から尾道へ向かうことも考えていたが、もう雨の心配はなさそうだったので、南回りのルートをとって淡々と東に進んだ。次の因島もサイクリングコースどおりに辿り、向島へ。
_ 向島から尾道へは尾道大橋を通って行くことも少し頭にあったが、時間が17時を回りそうだったので、行きと同じく尾道渡船を利用することに。短い船旅を終えると、いよいよ終着点。瀬戸内の島々を自転車で渡る旅がこれで終焉した。
_ 2日間の走行距離は約200km。片道100km走った計算。寄り道せずに行けば70km台になるらしいけど、やっぱりこういうところに来たら寄り道はしたい。また次に来る機会があれば、大島の亀老山展望台や生口島の耕三寺などに寄ってみたいねぇ。
_ さて、尾道の駐車場に帰り着いた後は、鞆の浦まで車で移動。PCナビが示すルートに従わず海辺の道を辿ったら、鞆の町に入って車の対向が困難な箇所に遭遇し、やや難儀する。ただそのおかげで鞆の町並みを少しだけ堪能できた。鞆の浦ホテル欧風亭で露天風呂に入り、暮れゆく景色を見ながら、体の疲れを癒したのだった。宮崎駿が「崖の上のポニョ」の構想を練ったこの地は、確かに「ポニョ」の舞台の雰囲気が漂っていた。
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それからは福山東ICからまた高速道路の旅。山陽道の渋滞を警戒して、瀬戸大橋から四国に再上陸し、淡路島を経由して本州に戻るというルート。しかし、高松自動車道が片側一車線区間が多いせいもあってか鳴門の手前あたりで渋滞発生、さらに明石海峡大橋でも渋滞。垂水ジャンクションを抜けて阪神高速に乗るのに相当時間を要した。家に帰り着いたのは朝の5時台。空が少しずつ明るくなってきてからだった…。
この日記は、GNSを使用して作成されています。